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World Parrot Trust

ワールドパロットトラスト

 WPT スタンス

翼のクリッピングについて

 インコやオウムは言うまでもなく鳥であり、ほとんどの鳥は飛ぶことができます。そして、鳥たちにとって飛ぶことは、羽根の色やさえずりの調子のような小さな話ではなく、彼らの生活においては根源的なことなのです。飛ぶということは、鳥たちが住んでいる場所、何を食べているか、誰と交流しているか、そして筋肉構造、呼吸器系、そして骨格や羽毛を含む、彼らの身体がどのように形作られているかなど、あらゆることを決定付けています。飛べない鳥の種類であるカカポ(または同様に飛ぶことのできない他の鳥の大半)を見てみれば、飛ぶことが鳥が鳥たる所以に非常に不可欠であることを理解できるでしょう。

注)カカポ(フクロウオウム)は、ニュージーランドのみに生息する、世界で唯一の飛べないオウム。鳥と思えないようなユニークな陸上性の生態で知られるが、現在では絶滅危惧種。

ワールド・パロット・トラストは、鳥たちの日々の生活が、野生で経験するのと同じように、豊かで刺激に満ちたものになるよう、世話していくことを理想としています。飛べることは、飼養下の鳥たちにとって、肉体的健康にも心理的幸福にも重要なことなのです。いくつか注意点はあるものの、この飛ぶという鳥の生物学的特徴は、クリッピングによって抑えられるよりも、積極的に促されるべきことであると、我々は考えています。注意点を考えていく前に、その理由についてもう少し掘り下げてみましょう。

飛ぶことの重要性

 

身体的な理由は、鳥たちの生理と栄養に関係しています。飛ぶことは、エネルギー消費が非常に高く、人に置きかえて言うならば、ランニングよりもはるかに激しい運動と言えます。野生のインコ・オウムは何マイルも飛んで移動し、時には毎日何時間も羽ばたいています。こういった活動は莫大なエネルギーを必要とし、高カロリーの食餌でなければ身体を支えられません。野生の鳥と同量の飛行を経験することができる鳥は、飼養下にはほとんどいませんが、健康な筋肉をつけて維持し、また、高栄養な食餌嗜好が過剰摂取や動作の鈍り、しまいには健康不良に至らぬよう、飛ぶということは彼らの健康のために重要なのです。

 

さらに重要なのは、インコ・オウムにとって飛べるということが、彼らの精神的活力に繋がっているということです。飛べることで、鳥は自分の時間を費やす場所を選んだり、誰と過ごすか(または誰を避けるか)を決めたり、食べること、飲むこと、眠ること、羽繕いすること、遊ぶことなど、いかなる時も、活動を自己選択できるようになります。飼養下の鳥たちを世話する中で、私たちが鳥から選択肢や選択力を奪えば奪うほど、その鳥が自らの鳥生(人生)に無力感を抱える危険性が高まります。人間からそのような自由を奪えば、何が起こるかはお分かりでしょう。鳥たちのような、知的で、社会的で、複雑な感情をもつ動物も、人間と同じであるはずなのです。

 

飼養下の全てのインコ・オウムが飛ぶというわけではありません。飛んだことがない鳥もいるでしょうし、飛んだことがあったとしても、何年も飛んでいたわけでもなく、かつてのような体力や飛行能力を失っているということもあるでしょう。また、羽が全て揃っていて、大きな禽舎で飼われていたとしても、全く飛ばないという選択をする鳥もいるかもしれません。私たちが理解すべきは、全ての鳥が、様々な種類の、みな違う個体であり、それぞれに異なった背景があるということです。結果として、成鳥の翼のクリッピングに対する万能の答えはありません。一般的には、鳥たちが自由に安全に飛び回れる環境で飼われるのがよいのですが、特定の個体にとっては、それを適用可能だとも理想的であるとも限らないということも、我々は認識しています。


最後に、幼鳥を育てる場合、飛べるようになる前に翼をクリッピングしてしまうと、「馴らす」というよりは、無力感を感じさせてしまう可能性が高くなります。もし若い鳥を適切で刺激のある環境(幼いうちに安全に飛ぶこと身につけられるようなスペースと時間を与えることも含まれます)で育てることができれば、彼らに周囲環境に対する自信と興味を持たせてあげられるのです。私たちが彼らの羽を切るという選択をすれば、彼らの活力とコントロール力を傷つけてしまいます。飛ぶことのできる鳥がペットとして迎えられ、ふれあいや関心を求めて私たちに向かって飛ぶという選択をするとき、飛べるということは彼らの自己選択力を高めていることになります。その結果、鳥と飼い主それぞれにとって、より前向きで、活発で刺激的な関係が生まれるのです。

Translation : Kazumasa Nonaka

 WPT: About > Overview > Position: Wing-clipping

WPTスタンス

翼のクリッピングについて
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エコツーリズムについて

エコツーリズムについて

 WPTはインコ・オウムに関わるエコツーリズムを支持していますか?答えはYES!です。インコ・オウムには素晴らしい動物としての普遍的な魅力があり、彼らは保全活動の強力な象徴となりえます。魅力的な素晴らしい動物を紹介する方法として、エコツーリズムが人々を鳥たちとその保護活動に結びつけてくれるのです。

 

野生でインコ・オウムを見ることができた人たちはみな、鳥たちとその保護に対する熱意を新たにして帰っていく可能性が高いようです。これは、森林や鳥がどのような扱いを受けているかを目のあたりにしたり、または自然の状態の野生個体を見るという素晴らしい体験であったり、またはその両方の結果であったりします。

 

人間と自然の関わりの上に成り立ついかなる事業と同様に、細かなことを正しく行っていくことは必要不可欠です。さもなければ、このような試みは恩恵よりも害の方が大きくなりかねません。エコツアーを予約する前に、滞在先のロッジを誰が所有しているか、そして地域のコミュニティがそういった施設や事業の所有、建設、維持と運営にどの程度関わっているかを調べてみてください。その組織は、何らかの保護活動をサポートしたり、その地域の生物の生息地保全の啓蒙に携わっていますか?その地域内で活動している自然保護科学者を支援し、主催するアクティビティは科学的知見に基づいて行われていますか?最後に、何らかの自然保護団体が、そのエコツアー会社を支援し、協力しているでしょうか?

 

環境への影響

 

 他に2つ、心に留めていただきたい事があります。エコツアーの実際の影響と、予想される影響です。まず、予想される影響について、近年、エコツアー自体がその地域の保全に深刻な悪影響を及ぼしているという懸念の声が上がっています。その概念は簡単に理解することができるでしょう。大勢の旅行者が田舎に踏み入り、生息地を荒らし、ゴミを投げ捨て、とにかく破壊のきっかけを残していくというようなものです。我々の経験上、もっとも配慮に欠けるエコツアー会社であっても、これはめったに起こりません。一般的に、いかなるエコツアー参加者よりも、材木伐採や、石油・ガスの探査と採掘、そして牛やヤギ、豚などの動物の放牧や採食の影響の方が、はるかに大きいのです。

次に、実際の影響について。エコツアーが、特に海外への旅行を伴う場合、非常に資源消費が高いのは疑いようがありません。一般的にこういった旅行には、様々な形状やサイズの自動車、列車、飛行機、そしてしばしば船が使われ、そのほとんどが化石燃料を動力源とし多量の温室効果ガスを発生させます。我々は、このような懸念に賛同してくれる全ての人たちに、環境への影響を考慮し、旅行によって発生する二酸化炭素量を大まかに計算し、同量以上分の排出権を数多ある専門機関から購入して相殺することを推奨しています。複雑だったり、高価なように思えますが、実際はどちらでもありません。ほとんどの場合、その費用は空港での食事1回分程度のものです。

 

つまり、エコツーリズムは、取るべき段取りは複雑ではあるものの、インコ・オウムの魅力を、彼らやその生息地の有効で長期的な保護や、地域社会に持続可能な生計のたて方を創出することに効果的につなげていくことによって、環境保全上の重要な機会となり得るのです。事前の計画と調査によって、エコツアーへの参加は、鳥たちにとっても、人間にとっても同様に価値のある経験となるでしょう。

 

Translation : Kazumasa Nonaka

 WPT: About > Overview > Position: Ecotourism

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保護鳥の増加と商取引について

保護鳥の増加と商取引について

 よい飼い主を必要とする鳥たちがいる限り、一方で私たちは飼い鳥の保護施設の過密という問題を抱えています。これは過去数十年にわたり存在しており、WPTの創設者であるマイク・レイノルズは、1960年代からこの問題について発言していました。

この10年で、この問題を様々な方法で解決しようと、主にイギリスとアメリカにおいて数多くのグループが結成されており、ケアを必要とする鳥をつきとめ、飼育の改善について飼い主を教育し、鳥たちのために新しいより良い家族を探し、こういった鳥たちの一時的にもしくは無期限のケアを行なっています。

 

WPTとして何を手助けするのか?

 

私たちがみな個々に自分の時間と労力について選択をしなければいけませんが、それはWPTにおいても同様です。インコ・オウムの福祉を考えれば、我々は、現時点では、我々の専門知識と資源を、合法非合法に関わらず野生個体の商取引の問題に集中させることが、最大数の鳥に対する最大の結果につながると考えています。EUの野生個体の輸入禁止のような、数百万羽の野生個体を救う規模の成功を毎年期待するのは現実的ではありませんが、いまだに年間何万羽もの野生のインコ・オウムが関わる多くの商取引が行われています。主要な輸出国と輸入国に注意を集中することが、鳥たちと彼らの福祉に目覚ましい変化をもたらす、もっとも効果的な方法であると感じています。また、WPTは保護施設の過密問題を軽減するため、収容されている鳥の里親になることも奨励しています。WPTは、飼育下の鳥や、その適切な飼育、そして1羽の鳥を飼うのに要求される多大なコミットメントの意識向上のため、先進諸国と途上国の両方で、数多くの教育普及活動も行っています。

 

やるべきことは、まだ数多く残っています。WPTは、野生と飼育下のインコ・オウムたちの福祉のために、各方面への働きかけと尽力を続けていきます。

Translation : Kazumasa Nonaka

 WPT: About > Overview > Position: Overpopulation and Trade

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インコ・オウムの飼育と繁殖について

インコ・オウムの飼育と繁殖について

 多くの人が、インコ・オウムが楽しく、美しく、そして魅力的な生き物であると思っていますが、そう思えるからといって、彼らが鳥たちと共に暮らすのに適しているというわけではありません。実際に大半の人が、鳥たちが幸せで健康的な生活を送るために必要なスペースや時間、そして知識を欠いています。それでも世界中には何百万人もの人々がインコ・オウムと生活を共にしていて、多くの鳥は豊かで刺激的で健康な生活を送っています。多くの場合、これらのペットの鳥たちは野生よりも長命で、鳥の世話をする人たちも、この魅力的な生き物たちと人生を分かち合うことを通して、あらゆる喜び、不満、そして充実感を知るのです。

 

人間は何百年も、時には何千年にもわたってインコ・オウムを飼ってきましたが、私たちが社会として鳥たちの身体的、社会的、そして医学的なニーズを理解し始めたのはここ数十年のことです。現在では、飼い鳥にそういった適切な世話をすることができるようになっています。

古い考え方から新しい視点へ

 

 かつて、インコ・オウムを好んで飼っていた文化地域では、鳥たちは切り花のように扱われ、特に生物的要求や繁殖の可能性を考えることもなく、できるだけ長く、美しく生きていれば良いという程度にしか思われていませんでした。それに対してみな特に違和感を感じることのないまま、飼育が行われていたのです。私たちが鳥がどれほど知的で長命であるかに気づき、彼らの複雑なニーズをより深く理解するにつれ、鳥たちと生活を共にすることに対して罪悪感を抱く人たちが増えてきています。

 

ワールド・パロット・トラスト(WPT)は、そんな思いを尊重する一方で、より広い考え方をしています。飼育下でも非常によく世話のされている鳥たちが数多くおり、彼らは刺激に満ちた、健康で、脅威から守られた、そしてしばしば非常に長い人生を送っていることは、多くの人が経験上知っているでしょう。また反対に、鳥たちは飼い主の人生を様々な面で非常に豊かなものにしてくれます。我々が鳥たちに魅了されたからこそ、WPTはこれらの生き物の真価を深く理解し、強く心を動かされ、世界中のインコ・オウムとその生息地を救おうと励んでいるのです。

 

責任ある鳥類飼育

 「責任ある鳥類の飼育」のコンセプトは、WPTが初めて構想・推進し、世界的に根付かせてきました。鳥類飼育の実践における高い規範を奨励し、全ての飼い鳥の起源である、野生個体の保全に対する責任を負うことの必要性を訴えかけています。我々の考えでは、責任ある鳥類の飼育はいま、配慮不足とそこから生まれる罪悪感というような初めの段階から、思いやりのある良心的な、より前向きで積極的な段階へと進んでいます。正しい知識と経験があれば、多くの飼い主たちは、鳥にとっても人間にとっても互いに有益な方法で、共に暮らすことができるのです。このような飼い主や飼育係は、鳥たちの生物学的および社会的ニーズについて素晴らしく幅広いスキルと深い実践的知識を身につけています。彼らは、自らの飼育の能力・技術についてだけでなく、驚くほど美しくよく順応した自分の鳥たちについても同じく誇りに思うべきです。

さらに、WPTでは、インコ・オウムは飼育下でも適切に育てられ、コンパニオン・バードとしての役目も果たすことができると考えています。個人宅で飼われる場合も、十分な世話さえ行われれば、鳥たちは充足した豊かな生活を送ることができることは、我々の数十年にわたる研究と実践を通して確証されています。慎重に準備することで、世界各地で局所的に絶滅してしまった種を、それらの地域へ放鳥できるよう、安全にうまく育てることも可能です。我々は、これらのプロジェクトによって、野生での個体数を新たに確実に増やせるような効果的な手法を編み出し続けています。

飼育と繁殖をやめてしまうことは、鳥たちに対してのの意識や敬愛を著しく低下させるだけでなく、保全に対する支援を損なうことになりかねません。その上で、鳥たちに降りかかる災難を最小限に抑えるために、我々が保護活動家としてできることは数多くあるのです。WPTでは、野生捕獲個体の商取引をなくし、野生の個体数を回復させ、世界中の人々に対してインコ・オウムのより良い飼育方法を教育普及する活動を行なっています。

Translation : Kazumasa Nonaka

WPT: About > Overview > POSITION: KEEPING AND BREEDING PARRTS

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さし餌について

さし餌について

 鳥の飼育について繰り返される議論の一つに、雛を人の手で育てるのか、親鳥に育てさせるのかという問題があります。幼鳥をさし餌で育てれば、より人に慣れ、飼い主との結びつきが強い、幸せなペットになるという意見もあれば、親鳥に育てられると、より健康で順応力が高い鳥になり、将来的に良い親にもなるという意見もあります。当然、両者の主張はいくらか正しくもあり、もちろんいかなる法則にも例外はあります。

WPTでは、原則として、鳥たちが何百万年もの間の進化を通して経験してきたことをもっとも良く反映する世話のしかたを支持しています。育雛にあたっては、いくつかの重要な注意事項を除き、親鳥が最も適していると考えています。

親鳥による育雛の重要性

 もし雛が育つ過程を目にする機会に恵まれれば、雛が親鳥から餌をもらう以外にも、巣の中では多くのことが起こっていることに気づくでしょう。雛と母鳥、父鳥の間には複雑なふれあいがあり、ほとんどのインコ・オウムの場合、兄弟もそこに含まれます。野生においては、さらに巣材の中の虫や、うろの上方にぶら下がるコウモリ、さらにはそこに出入りする他の動物に対してもこういった関わりがあります。我々の調査対象であるサクラボウシインコにいたっては、巣の中に設置したカメラが、イグアナの尻尾の先に幸せそうにとまっている雛の姿をとらえていました!

他の複雑で高い知能を持ち、成熟に時間のかかる生物について分かっている事に基づけば、幼少期の経験、特に親鳥や兄弟との関係は、雛の健全な生育と巣立ちの成功に非常に重要な関わりを持っています。人の手で育てる事では、そのような複雑な関係性を昼夜問わず真似ることはほとんど不可能である一方で、(とりわけ親鳥も自分の親に育てられていた場合は)親鳥は非常に高い確率でこの素晴らしい仕事を成し遂げるのです。

人工育雛のメリット

 インコ・オウムに関わるほぼ全ての事と同様、育雛についても現実はそれほど白黒のはっきりしたものではありません。もちろん、片方または両方の親鳥が何らかの理由で育雛を放棄したり、雛の命を脅かすような選択をした場合、人の手で雛を育てることはあります。あるいは、一方の親鳥が子育てをすることができないような場合もあります。こういった場合、雛を巣から取り出し、さし餌を行うか、巣に残したままで補助的な給餌を行うことになります。このような雛は、特に巣立ちから独り立ちの段階で十分な社会性を身につけさせれば、健康で幸せな鳥に成長させることができます。

 

最後に、育てられたのが人か親鳥かに関わらず、考慮しておく価値があるのは、ほぼ全種のインコ・オウムにおいて、飼い鳥が食べている餌と、同種の鳥が野生で食べている餌にはごく僅かな類似性しか見られないということでしょう。これは栄養学的な観点から重要であることはもちろん、その他の問題点もあります。一つには、野生の樹木の種、果実、蕾や樹皮の驚くほど複雑な成分に関するもので、もう一つには、それらの構造に関するものです。野生のインコ・オウムの研究で、雛の素嚢(そのう)の中の食物を採取する調査では、一般的に、硬い殻に包まれた丸ごとの種、昆虫、樹皮、土、その他の複雑で雑多な成分が見つかります。育雛が親鳥によってか人によるかに関わらず、飼育下の雛のそのうから見つかることはなさそうなものばかりです。この点を踏まえると、飼い主は可能な限り親鳥に雛を育てさせるだけでなく、親鳥にも出来るだけ多種多様なものを食べさせる必要があり、そうすることで、親鳥が雛に最良の餌の組み合わせを選んで与えることができるようになるのです。

 

雛を育てる方法にはそれぞれの利点がありますが、やはり一般的には、鳥の子供には鳥の親が最適でしょう。

Translation : Kazumasa Nonaka

WPT: About > Overview > POSITION: Hand-feeding

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飼い鳥の自然界への放鳥について

飼い鳥の自然界への放鳥について

 WPTでは、鳥は野生に戻してあげる方が幸せなのではないかという質問を受けることがあります。そのような気持ちは素晴らしいことではありが、我々はその鳥と野生の鳥たちのお互いの幸福のため、放鳥に強く反対しています。鳥の野生復帰は可能で、その傾向は高まりつつあるものの、よく管理されたプログラムの下で行われた場合に限ったことであり、多くは個人の飼い主によって行えるようなものではありません。

何が有効で、何がそうではないのか

 我々がここ10年でインコ・オウムの放鳥に関して直接的に経験した中では、野生で孵化し捕獲されたばかりの鳥、もしくは慎重に管理された環境で野生での生活のために適切に準備のなされた鳥が、自然界の生存の可能性が最も高くなっています。

元々野生であった鳥は、野生での食餌を見分け、その種の他の個体とどのように接するかなど、生存に必要な多くの重要なスキルを覚えています。野生の鳥は、よく発達した行動パターンを身に付けており、集団での生活を可能にする、複雑な社会構造に問題なく参加することができます。集団での生活は、捕食者を回避し、食物を見つける手助けになり、子孫を残し繁栄するための手助けになるものです。

 

それに対し、長い間コンパニオンバードとして飼われてきた鳥は、多くが(時には何世代にもわたる)飼育下で生まれ、人間のそばで暮らしています。彼らは1羽で飼われていることが多く、生活に必要なもの(食餌、水、安全、他との関わり)を得るために、飼い主に大きく依存しています。よいコンパニオンバードになるために身に付けたスキルは、野生下で生き残るために必要なものとは完全に正反対なのです。

 

このようなコンパニオンバードが自然界に放たれれば、飢えや捕食動物の脅威、極端な気候、捕獲や狩猟の標的になったり、今までに経験したことのない環境に置かれることにより、様々な現実の重圧に直面します。もし1羽のみで放鳥されてしまえば、生存の可能性はさらに低下します。彼らが自然界で生き残り繁栄していくための幅広い準備と訓練を受けていない限り、ごくわずかな個体しか生存することはできないでしょう。我々はこういった理由から、特別な事情がないかぎり、飼い鳥を野生に戻すことに強く反対しています。

 

許可と病気のリスク

ほとんどのインコ・オウムの国際輸送は、これらの動きを監視することを目的とする国際条約CITESによって管理されています。鳥を原産国に戻すためには、健康状態やその他の診断に加え、適切な書類手続が必要となります。必要とされる許可を得るのは、しばしば煩雑で時間のかかる作業となります。

長期間飼育下に置かれた鳥にとってさらに大きな懸念は、いくら最適なケアの元で飼育されていたとしても、野生下では存在しない病気に接触している可能性があるということです。発見されるまま病気をもった個体が野生に放たれてしまえば、野生の個体群をさらなる危険に追いやることになりかねません。野生の個体群がすでに他の理由で脅威に晒されている種にとっては、潜在的な病気のリスクによって、さらにその種を消滅に追い込む可能性もあるのです。したがって、細心の注意のもと病気の検査を行い、放鳥の前に検疫を経た個体だけが、放鳥にふさわしい候補と見なされるべきです。

他に方法はあるか?

 ほぼ全ての場合、鳥たちに可能な限り大きな飛ぶスペース、彼らを刺激する幅広い種類のエンリッチメントのためのグッズと、健康な食餌を与えるよう、飼い主たちに強く勧めています。飼育下の鳥が、野生の鳥と同じ生活を送ることはできないのは明らかですが、彼らを捕食動物、飢え、罠や暴力的な天候から守り、長く楽しい生活を提供してあげることは可能です。

鳥たちを十分に世話することができなくなった飼い主には、世話をすることのできる他の家族に譲るか、里親を募集したり、あるいは動物関係機関や鳥のシェルターに渡すことを勧めています。人に馴れている鳥はよく公共施設の素晴らしい顔となり、インコ・オウムの窮状について一般の人々に知ってもらうための助けとなれるでしょう。

Translation : Kazumasa Nonaka

WPT: About > Overview > Position: Releasing Pet Birds

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