<鳥さん個別相談・飼い主さんの声6>じゃじゃまるちゃん・モモイロインコ|呼び鳴き改善、咬みつき改善
鳥さんにトレーニングを行う上で、応用行動分析学に基づくトレーニングの原理は同じでも、鳥さんや飼い主さんの性格・生活リズムによって、それぞれに合ったアプローチ法をあてはめていく応用力が必要となります。そこで、さまざまな鳥さんや飼い主さんの取り組みを知っていただくことで、ご自身の鳥さんのトレーニングに応用しやすくなるといいなと思っています。
それでも、まったく同じことを試してみてもうまくいくとは限らないのがトレーニングの難しいところでもあります。
ちゃんとやってるのにうまくいかない…
という場合は、何かしらのポイントがうまく鳥さんに伝えられておらず、トレーニングの見直しが必要だと判断できます。鳥さんに適切に伝わらない方法でこの先ずっと継続したとしても、残念ながら改善は見込めないと思われます。そんな時は、トレーナーに相談していただけたらと思います。
トレーニングは、鳥さんに人がこうしてほしい、これはやめてほしいということを適切に伝えられるツールです。トレーニングを行うことで、鳥さんの行動を観察することになるので、鳥さんのボディランゲージを通じてたくさんの気持ちを受け取ることができるようになると感じています。そして、鳥さん側からしてみたら、大好きな飼い主さんと一緒にできる遊びの一環でありコミュニケーションの一つです。人側の一方的な希望を押し付けることは本意とはしておりません。そのため、飼い主さんが100%望むような改善につながらないケースもあることもご理解いただけたらと思います。
それでも、現在、鳥さんの困った行動にお悩みの方、他の飼い主さんと鳥さんの取り組みを知っていただくことで、あきらめずに自分もやってみよう!と思ってくださるきっかけになっていただけたら嬉しいです。
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<飼い主さんの声>じゃじゃまるちゃん・モモイロインコ|呼び鳴き改善、咬みつき改善
・鳥さんのお名前:じゃじゃまるちゃん
・鳥種: モモイロインコ
・ご相談時の年齢: 約7か月
・ご相談内容: 呼び鳴き改善、咬みつき改善
・飼い主さま:じゃじゃまま さま
・ご相談日:2019年10月20日(初回)、2019年11月17日(2回目)
・ご相談方法:オンライン

<飼い主さんより>
この子を迎えて1~2ヶ月ほど経った頃、呼び鳴きと噛みつきに困り果て、藁にもすがる思いで柴田さんにご連絡しました。もともと小&中型インコを飼った経験があり、インコのことはよく知っているつもりでした。憧れの大型インコを迎えて喜んだのも束の間、声の大きさやパワーの強さは想像以上で、早くも手に追えない状態になっていました。ネットに転がる情報を拾って試すものの(ギャーギャー鳴くときは部屋を暗くして落ち着かせる、など・・)まったく効果なし。お迎えする前にSNSで色々な大型インコを見ましたが、どの子もお利口に見え、「どうしてうちの子だけこんなにおバカさんなの・・」「これから何十年も一緒に暮らすのに、こんなことでやっていけるのだろうか・・」など、絶望的な気持ちになっていました。
(柴田さんのトレーニングを終えたあと、自分がよかれと思ってやっていた事がことごとく逆効果で、しかも“おバカさん”だと思っていたじゃじゃまるがとても頭のいいインコだったと知って衝撃を受けるのですが・・)
Q1:ご家庭で行ったトレーニング内容について:
■ご褒美として利用したもの:
小粒ヒマワリ(もともと普通サイズのものを使っていましたが、柴田さんのアドバイスで小粒のものに変えました。すぐに食べられるのでトレーニング中にピッタリでした。)
*トレーナーより補足*
トレーニングの時に1回に渡すご褒美のサイズは、鳥さんの鼻の穴くらいのサイズが反復のトレーニングが必要な時は最適です。粟穂を使う場合は鳥さんが一口食べたら粟穂を引く、エンバク(オーツ麦)を使う場合は1本を半分に折ってから使うなど、鳥さんの大好きなご褒美によってサイズの調整をお願いします。
■呼び鳴きに対してやったこと:
- ギャーギャーキーキーが収まらないとき、異質な音(鍋の底をカーンと鳴らしたり)で一瞬気を紛らわせる。静かになったらオヤツをあげる(*1)。
→最初の頃はこれをよくやりました。冠羽をピン!と立てて一瞬固まるスキきにすかさずオヤツをあげました。ただしすぐに音に慣れてしまうので、代わりの音を探すのが大変でした。(笑)
*トレーナーより補足*
雄叫びをあげている時に、鳴き止むまで、あるいは疲れて鳴き止むのを待っていてもいつになるか分かりませんし、まず疲れません。声を掛けて止めさせようとすると、鳥さん側は「そうか!これくらい鳴けば声を掛けてくれるんだ♪」と学習してしまい改善は見込めなくなってしまいます。なので、雄叫びにのめり込んでいる時は、一瞬我に返ってもらえるように飼い主さんの声以外の音を出してもらいました。この後のご褒美をあげる上記*1のタイミングとしては、我に返って雄叫びをあげなくなってから少なくとも10秒は時間をおいてご褒美をあげるようにお願いしました。そうしないと、鳥さんの受け取り方として、①雄叫びをあげる⇒②なんか変な音がする⇒③ご褒美がもらえる♪と連続した形で学習してしまうからです。
- お喋りの時に声をかける/数回に一度は顔を見に行く&オヤツをあげる
→徐々にお喋りが出はじめていた頃だったので、自分からお喋りをした際は顔を見たり、近寄ったりオヤツをあげたりと、積極的に反応するようにしました。
-ギャーギャーが始まったら、声をかけてお喋りを促す。お喋りのレスポンスがあったら近寄って褒める&オヤツ。
*トレーナーより補足*
呼び鳴き改善は、行動を修正していく最初の1か月は飼い主さんにとって一貫したルールの元で根気が必要になります。それを頑張ってくださったんだな~と拍手を送りたいです。
ちなみに咬みつき改善の場合は、最初の行動の変化はトレーニングを始めて約1週間程度で、その後行動の定着をはかるまでに1か月くらいを目安にしています。(鳥さんや状況によって異なります。)
■噛みつきに対してやったこと:
-ヒマワリを使って手の甲に乗る/降りる トレーニング
→「ステップアップ」「ステップダウン」を合言葉に実施しました。回数を重ねるうちに、オヤツ無しでも乗ってくれるようになりました。このトレーニングをするようになって、なんとなくじゃじゃまるがこちらの言うことを意識して聞くようになってくれるようになった実感がありました。
*トレーナーより*
1回目の飼い主さんとじゃじゃまるちゃんの様子と、2回目の様子は全く別物で思わず笑いが出るほどだったのを覚えています。1回目の時は、飼い主さんもじゃじゃまるちゃんも「一体どうすればいいんだろう…」とお互いが困惑している様子でした。約1か月のトレーニングによって意思疎通ができるようになったんだなと、2回目のお話を聞く前に確信がもてるほどその様子は明らかでした。
Q2:トレーニングを行っている時に難しかった点やうまくいかなかった点について:
最初の頃は、日常生活のなかにいかにトレーニングを組み込んでいくかに苦労しました。インコは本当に頭が良くて、人間のことをよく観察しているので、少しでもトレーニング中に決めたルールを人間がうっかり忘れて接すると「ラッキー!この方法でもいいのね!」とでも言わんばかりに、望ましくない行動を取ってしまうことがありました。インコとの知恵比べで負けないように(笑)、日常生活のなかでもしっかりと行動に一貫性をもって接することがとても重要だと思います。
*トレーナーより*
トレーニングをやり始めの頃は、飼い主さん自身がかなり意識して行動することが必要になりますが、長年暮らしていると、体の方が覚えてくれるようになると思います。個人的な経験(失敗談)で言うと、ご相談の時に急に動くとびっくりしてしまうタイプの鳥さんもいるので、まず声を掛けて動くようにしていたところ(動くよ~、立つよ~など)、職場でもついつい無意識に「立つよ~」と声に出てしまったことがあります(笑)
Q3.トレーニングを経て、現在の鳥さんの状況について:
特に、呼び鳴きについて大きな変化がありました。じゃじゃまるが人間になにかを伝えたいとき、バリエーション豊富なお喋りで知らせてくれるようになりました。呼び鳴きをゼロにすることはできない、ある程度の呼び鳴きは自然なことだと柴田さんに教わり、だいぶこちらの気持ちが楽になったことも大きいですが、1日に数回あるギャーギャー鳴きの際も、声をかけるとお喋りに変えてくれたり、ケージに取り付けてあるベルで知らせてくれたりと、本当に一緒に生活しやすくなりました。
Q4.同じように悩んでいる飼い主さんに向けてのメッセージ:
そもそも“バードトレーニング”という考え方があることすら知らなかった自分が、柴田さんの著書『インコ&オウムのお悩み解決帖』がきっかけでバードトレーニングに出会えたのは奇跡だと思います。ホームページからご連絡するまで随分悩みましたが、(怒られたらどうしよう、と、いらぬ心配をしていました。笑)ZOOM越しにお会いした柴田さんはとても優しくて面白い方で、じゃじゃまるの行動や個性に合わせていろいろなトレーニングのアイデアを提案してくださり、とても救われました。まさにバードトレーニングは1日にしてならず(?)、今でも日々トライ&エラーの繰り返しですが、気長にじゃじゃまるとの知恵比べを楽しんでいます。
特に大型の鳥さんとの暮らしは、これからもずーーーっと知恵比べが続いていくのではないかなと思います。頭がいい分、人を試そうとすると言いますか…。そういう場面がちょくちょく訪れたとしても、基本的なルールを身に付けていれば対応できると思いますし、そうなるためにも鳥さんに適切に伝えられるトレーニングを身に付けておいていただけるとお互いハッピーかなと思います。
冒頭で飼い主さんがおっしゃっているように、SNSで見かける鳥さんたちは問題なく(ケージから出てくる、手から直接ご褒美を渡せるなど)トレーニングができる段階だということも言えますし、中にはSNSに登場する以前に飼い主さんがトレーニングをしてくださっていた経緯がある場合もあるかと思います。
小型・中型・大型にかかわらず、これから鳥さんのお迎えを検討されている方は、SNSで見かける鳥さんはその鳥さんの個性であり、これからお迎えしようとしている鳥さんは、たとえ同じ鳥種であっても同じことができるとは限らないということを念頭においていただけたらいいなと思っています。そして、今回のじゃじゃまるちゃんの飼い主さんのように、あきらめずにトレーニングに挑戦していただけたらいいなと思います。
じゃじゃまるちゃん、じゃじゃままさん、ご協力いただきありがとうございました!
ちゃんとご挨拶できて、すごいぞ!じゃじゃまるちゃん!