<鳥さん個別相談・飼い主さんの声2>ミカンちゃん・オカメインコ|呼び鳴き改善・ エンリッチメント
『鳥さん個別相談』をご利用くださった飼い主さんの声をご紹介いたします。
鳥さんにトレーニングを行う上で、応用行動分析学に基づくトレーニングの原理は同じでも、鳥さんや飼い主さんの性格・生活リズムによって、それぞれに合ったアプローチ法をあてはめていく応用力が必要となります。そこで、さまざまな鳥さんや飼い主さんの取り組みを知っていただくことで、ご自身の鳥さんのトレーニングに応用しやすくなるといいなと思っています。
それでも、まったく同じことを試してみてもうまくいくとは限らないのがトレーニングの難しいところでもあります。
ちゃんとやってるのにうまくいかない…
という場合は、何かしらのポイントがうまく鳥さんに伝えられておらず、トレーニングの見直しが必要だと判断できます。鳥さんに適切に伝わらない方法でこの先ずっと継続したとしても、残念ながら改善は見込めないと思われます。そんな時は、トレーナーに相談していただけたらと思います。
トレーニングは、鳥さんに人がこうしてほしい、これはやめてほしいということを適切に伝えられるツールです。トレーニングを行うことで、鳥さんの行動を観察することになるので、鳥さんのボディランゲージを通じてたくさんの気持ちを受け取ることができるようになると感じています。そして、鳥さん側からしてみたら、大好きな飼い主さんと一緒にできる遊びの一環でありコミュニケーションの一つです。人側の一方的な希望を押し付けることは本意とはしておりません。そのため、飼い主さんが100%望むような改善につながらないケースもあることもご理解いただけたらと思います。
それでも、現在、鳥さんの困った行動にお悩みの方、他の飼い主さんと鳥さんの取り組みを知っていただくことで、あきらめずに自分もやってみよう!と思ってくださるきっかけになっていただけたら嬉しいです。
<飼い主さんの声>
ミカンちゃん・オカメインコ|呼び鳴き改善、エンリッチメント
●鳥さんのお名前:ミカンちゃん
●鳥種: オカメインコ ♂
●ご相談時の年齢: 1才半
●ご相談内容: 呼び鳴き改善、エンリッチメント
●飼い主さま:ヤヨイさま
●ご相談日:2020年3月15日(初回)、2020年4月9日(2回目)
●ご相談方法:オンライン

Q1:ご家庭で行ったトレーニング内容について:
➀大きい声で鳴くときは返事をしない。
②許容範囲の声の時は返事をする。
③声で返事をする代わりに机などをトントンする。
④席を外す(他のお部屋に行くなど)時は目印として目立つ色のハンドタオルをカゴの上に置く。この時は少しいなくなるよっていうことをわかってもらう。
⑤鈴を鳴らしたら粟穂をあげる。
<トレーナーより>
鳴き声をゼロにすることはできないというのは、「飼い主さんの声1」にも書かせていただきました。でも、「大きな声で鳴けば、思い通りになるぞ!」ということを学習してほしくはないと、どの飼い主さんは思うのではないでしょうか。
一見、呼び鳴きと思われるものも、実は呼び鳴きではないというパターンもあります。オカメインコの男の子の場合、変にテンションが高い時に大きい声で鳴いたりすることもあります。発情の時期であったり、単に飼い主さんから教えてもらった歌を音程をはずしながら自信満々に練習している時など、悦に入ってしまっているという表現が合っているかもしれません。
飼い主さんによると、発情の問題があったことからケージから鏡を取り除いたら他のおもちゃで遊ばず、人に依存して一人遊びが苦手になったのではないか、ご主人の行動とヤヨイさまの行動とで一貫性がないことから、ミカンちゃんも迷っているのではないかとのことでした。
ミカンちゃんの場合、ご相談時に確認したところ、飼い主さんが視界から見えなくなると鳴いていたことと、ケージの位置は不安になるような材料は見当たらなかったことから、「こっち来てー!どこ行ったのー!」という呼び鳴きで間違いないかなと思いました。
上記①~③、⑤のトレーニングは、大きい声に代わる飼い主さんを呼ぶ手段として、代替行動を教えてあげることを目的としています。ダメダメ!ばかりだと、鳴き声をコミュニケーションにしている生き物であることや、飼い主さんとコミュニケーションを取りたいと思う理由があるのにもかかわらず一方的に禁止ばかりすると、鳥さんはどうやっていいかわからなくなってしまうからです。
③は、こちらからトントンの音を誘い水として出して、ミカンちゃんが大きい声で鳴く代わりにトントンと返してくれようになることを狙っています。
④は、少しの間鳥さんの視界から飼い主さんがいなくなるけど、すぐに戻ってくるからね、ということを伝えるようにするためのものです。例えば、飼い主さんが仕事などで家を出る時は、鳴き声を上げたとしても、飼い主さんが帰ってくるまで何時間も鳴き続けているという鳥さんはいないのではないかなと思います(実は過去にいましたが)。むしろ、家の扉を閉めてカギをかけたとたん、鳴き止む鳥さんが多いのではないでしょうか。これは、日々の習慣から、★飼い主さんがお化粧などの身支度をしている、★あのカバンを手にしている、★あ、「行ってきます」って言った!という飼い主さんの行動の時は、いくら鳴いてもムダなんだという感じで、ある意味あきらめているからだと思われます。鳥さんは、ムダなことはやらない主義のように思います。人から見たらムダだよと思う行動(問題行動と言われる行動)を繰り返し行うのは、鳥さんから見たら過去の成功体験があったり、100回に1回の確立でも成功した経験があれば鳥さんにとってはムダではないという判断のようです。人でいうとこの、パチンコにのめり込んでいく感じだと言われています。過去に1回でも勝った経験があれば、次こそは!次こそは!という確証のない期待を持っているのと似ています。
Q2:トレーニングを行っている時に難しかった点やうまくいかなかった点について:
人の姿が見えないのが少し長めになると呼び鳴きの声が大きくなってパニックになってしまう。
その時は、大きな布や音(*1)など一度パニックを抑えてからじゃないと悪循環になってしまう。
自分以外の家族が同じように取り組めない。(*2)
<トレーナーより>
*1~一旦、他に気をそらすためのもので、決して怖がらせようという目的ではありません。
*2~ご相談の流れとしては、身体的な問題がない⇒呼び鳴き行動を確認して、トレーニング法をご提案していきますが、複数人で暮らしていらっしゃる場合、ルールの統一を話し合っていただくことになります。人によっては、今の声はOKだと感じても、ある人にとっては許容できない!と感じることも多々あります。この辺のルールの統一をしていただかないと、トレーニングはできませんし、統一しないまま取り組んだとしても鳥さんは混乱してしまうことになります。時々、今のボリュームは許してほしいな~鳥さんだし~、という感じで口出ししてしまうこともあります。

Q3.トレーニングを経て、現在の鳥さんの状況について:
オヤツが欲しい時は鈴を鳴らすようになって、一緒に遊べるトレーニングができるようになった。
呼び鳴きは返事をしていれば大きい声ではなかなか鳴かないが、完全に改善はできていない。
<トレーナーより>
完全に改善は難しいですよね…。それでも、ミカンちゃんのエンリッチメントが増えているといいなと思っていたところ、今回、送っていただいたミカンちゃんのケージの中に、ご相談時よりもたくさんの工夫がなされていたので感動しました。
Q4.同じように悩んでいる飼い主さんに向けてのメッセージ:
鳥さんの性格、改善したい内容によっても千差万別なので気長に取り組んでもらいたいです。
ミカンちゃんとヤヨイさまは、オーストラリアにお住まいです。
そこで、2つの病院を利用しているとのことで、ご相談時にもおうかがいしたお話がとても興味深かったので、以下にご紹介させていただきます。
<動物病院A> ■食べ物の方針:
シード推薦。ペレットは勧めていない。特にオカメインコはオーストラリアの鳥なので極力彼らの生活環境にあったものをとりいれる。フルーツは少なめ(熱帯地の鳥ではないため)。穀物などの野菜を推奨。米も炊いたものであればOK。その病院のブレンドしたサプリメント(液体)は勧めている。偏食の子とかもいるので。 ■おもちゃの方針:
アクリルのおもちゃがおススメ。理由は、破片を呑み込んでしまわないように。木も噛み切れるようなものはダメ。発情が激しかったので鏡は撤去! ■その他:
診察は基本糞のチェック(顕微鏡で)。体重測定とか触診はあまりしない。 <動物病院B> ●食べ物の方針:
ペレット推薦. サプリメントはそこまで推してない。(ペレットでバランスよく取れてるからということで)。シードもありだけど、シードのみは勧めていない。野菜果物などはお勧め。 ●おもちゃの方針:
基本鳥に毒じゃなければ、何でもOK。アクリルは逆に勧めていない。万が一噛み砕いてのんでしまったら、自然素材の物のように自然に出てこないから。鏡も発情の様子次第。 ●その他:
診察は基本触診と体重チェック。糞のチェックは見た目のみ。(顕微鏡なし)

日本の飼い鳥専門の獣医師の先生が聞いたら「えっ!?」というような部分もありますね。獣医師でなくても、飼い主さんも「そんな感じでいいの??」という感じなのではないでしょうか。
飼い主さんによると、「わりかし正反対な感じなので、ミカンに合わせて組み合わせてる感じです。双方の考え方もわかるので、あまり偏らないようにしています。」とのことで、獣医師の話をうまくミカンちゃんに合わせていらっしゃるそうです。
病院によって、方針や見解が違うのはオーストラリアに限らず、日本でもそうかと思います。飼い主さんにできることは、獣医師のアドバイスを取り入れながらも、それぞれの鳥さんに合うように、合いそうな部分をチョイスするということになると言えるのではないでしょうか。疑問に感じたら、遠慮することなく質問できる病院だととても理想的だなと感じています。さらに言うと、治療などの医学的な部分は獣医師が担い、行動学的な部分はトレーナーが担うという連携ができるといいなと思っています。
ミカンちゃん、ヤヨイさま、ありがとうございました!
いつか、オーストラリアに行ってミカンちゃんに会えたらいいな~などと勝手に妄想を膨らませています。